◎ 書 籍 編 ◎
※基礎的なものから並べてみました。
楽典ノススメ
青島広志著 / 音楽之友社[1993]
…作曲家・青島広志さんが、従来の楽典にはない要素を折り混ぜて書かれた、
正統的かつユニークな楽典。例題等は少ないが、とにかく読者の興味をそそる
読みやすく機知に富んだ文章で、楽典の中でも独習者に向くのではないかと思う。
"楽典"(を基礎とする音楽理論)は、音楽大学で勉強された方が、生徒に問題を
解かせながら教えて行くというケースが多く、独習というのは人によってはかなり
難しい事かもしれない。あえて独習するのであれば、スコア問題・総合問題がある
音大受験問題集を、楽典を引きながらゆっくりと確実に問題を解いて身につける
やり方が良いと思う。
[特薦]はじめての指揮法-初心者のためのバトンテクニック入門-
斉田好男著 / 音楽之友社[1999]
…指揮者・斉田好男さんが、長年の指揮法指導者としての経験と研究を元にして
『アマチュア指揮者のための指導法を含む入門書』を目的に書かれた本。
指揮法をテーマとした数ある教本の中でも、指揮者・指導者の役割についての
詳細な解説、指揮法・演奏のツボ、実用に重きおいたバトンテクニックの解説など、
入門者から長年の経験者に至るまで役立つ内容が吟味されており、平易な言葉で
これほど内容のある入門書もまれであると思う。アマチュア指揮者が持つ疑問や
悩みに対する根源的な答えは全部含まれていると言っても過言ではないと思う。
このような本がみんなに読まれるようになれば、このホームページをたたんでも
良いとさえ思った。『座右の銘』にして下さい。
実践的指揮法-管弦楽・吹奏楽の指揮を目指す人に-
小松一彦著 / 音楽之友社[1986]
…指揮者・小松一彦さんが、斎藤指揮法と管弦楽・吹奏楽の指揮法について
書かれた本。
斎藤指揮法の本の中では比較的初心者・アマチュアにわかりやすく書かれている
のではないかと思う。多彩な内容が非常に手際良くまとめられているし、指揮法の
本にしては珍しく、吹奏楽の良く知られた曲が譜例として使われていたりするなど、
吹奏楽団の指揮者にもありがたい指揮法の教科書である。
作曲の基礎技法
アルノルト・シェーンベルク著 / G・ストラング+L・スタイン編
山縣茂太郎+鴫原真一訳 / 音楽之友社[1971]
…"シェーンベルク"、"作曲技法"とくれば、前衛的・現代的・上級者向き・作曲家向き
の本だろうと、手にとって見ようと思わない人の方が圧倒的に多いだろう。
裸の大将も、人に勧められるまでは完璧にそう思いこんでいた。
しかし実際は、音楽の成りたち(テーマ、モティーフetc...)や型(形式etc...)について
ていねいに説明されており、易しいとは言わないまでも大変わかりやすいという
印象を受ける。
最近出会った本でまだ最初の方しか読めていないのだが、指揮者・演奏者にとって
不可欠な形式感覚(細部から全体の意味を、全体から細部の意味を感じ取る)を
育むための本として取り組んでいきたいと思う。
演奏のための楽曲分析法
熊田為広著 / 音楽之友社[1974]
…具体的な譜例と分析手法が豊富に掲載されている点で、非常に優れた楽曲分析の
本である。楽譜から音楽のエネルギーを読み取って、自然で生き生きとした演奏を
作り上げるための知識が詰まっている。楽典程度以上の和声法を頭に入れてから
読んだ方が良い。
生きた音楽表現へのアプローチ
保科洋著 / 音楽之友社[1998]
…作曲家・指揮者の保科洋さんのライフワークともいえる本。
『エネルギー思考に基づく演奏解釈法』という副題の通り、楽曲分析と演奏解釈と
いう概念について整理し、踏み込んだ研究内容を表した力作である。これも最近
読み出した本で、非常に内容が濃く読む方にもパワーがいるが、得るものも大きい
と確信する。
日本人はクラシック音楽をどう把握するか
傳田文夫著 / 芸術現代社[1994]
…この本は演奏家にとって音楽の理論書と対をなすものであり、その中でも
日本人の演奏表現法の分析と弱点の克服法が明快な言葉で語られている
点で、最も個性的で独創的ではないかと思う。
その豊富で斬新な内容を私なりに要約してみると、
「日本人の発音・発声(母音・子音・無声音)と、その呼吸法やアクセントや
リズム、ひいては遠まわしな言語表現・態度に至るまで、音楽を"演奏する"、
"聴く"、"語る"といった行為につながっている。」といったところだろうか。
私好みの本である。
歌の翼、言葉の杖
武満徹対談集 / TBSブリタニカ[1993]
…ジョン・ケージ、ヤニス・クセナキス、ユン・イサン、ルイジ・ノーノ、サイモン・ラトル、
ジェルジュ・リゲティ、ルチアーノ・ベリオ、他と作曲家の故・武満徹氏が自由に
語った対談集。
話題は広範に渡り、彼らの音楽を知らなくとも読める興味深く、時に辛辣な
内容だが、現代とこれからの文化、若者、音楽シーンに対する深い懸念が
語られており、演奏に携わる人間には読んでおいて欲しいなぁと思う。
指揮者としてはベルリン・フィルの次の音楽監督に決まったサイモン・ラトルが
登場するが(この対談は何年も前)、『ベルリン・フィルとはリハーサルにかける
時間のことでいつもケンカしているんです。』という発言があっておもしろい。
※番外編
天才の勉強術
木原武一著 / 新潮社(新潮選書)[1994]
…この本に登場するのは、"モーツァルト"、"ニュートン"、"ゲーテ"、"ナポレオン"、
"ダーウィン"、"チャーチル"、"ピカソ"、"チャップリン"、"平賀源内"といった人物
である。"アマチュア指揮者に紹介したい本を..."と考える中で、ふと思いついて
昔読んだこの本を、本棚から探し出してきた。
この本のプロローグ(前書き)には"天才は学習の産物である"という副題がおり、
一部を次に引用させていただく。
(引用文)
裸の大将のページの"ルーツ"の一つは、この本にあったのだと思う。
出会いの社会学
私の大学卒業論文[1989]
…「出会い」という言葉は日常何気なく使われるが、「"出会い"とはどういうことか」
「"会う"と"出会う"はどう違うか」というテーマで書いたもの。4章構成。
稚拙な文章だが、内容については改変しないよう配慮しながら、ことば使いなど
若干手を加えた。こういったテーマに興味のある方は、表題をクリックして下さい。