天才の勉強術
木原武一著 / 新潮社(新潮選書)
(プロローグより一部を引用)
『…人間は生まれてから死ぬまで、つねに未熟な状態にとどまり、いつまでも
なにごとか学び続ける。しかし、いつまで学び続けても、いぜんとして
未熟な状態を脱出できないのはなぜだろうか。
…ものを学ぶことが楽しくてたまらないからである。もちろん、学校の授業や
本を読むことばかりが勉強ではない。何か新しいことを知ったり、何か
新しい能力を身につけたりすること、そして、それらをさらに深めたり高めたり
すること、それがものを学ぶということであって、人間が味わう感動や楽しみの
大半は、こういったところから生まれてくるものではなかろうか。
…天才が天から与えられた才能とは、つまりは、ものを学ぶという才能に
すぎないのである。
天才とは、一般の人間とはかけはなれた秘密の能力を持った人間ではなく、
だれでも持っている学習能力を、ある限られた狭い対象に向けて集中的に
発揮した人間のことである。
…天才とは学習の産物である。
この仮説を、世に天才と呼ばれる人びと、あるいはもっと広く、過去にすぐれた
仕事をなしとげた人びとの生き方や学習法、仕事ぶりなどを通して検証し、
その「勉強術」の秘密をさぐり、それはけっして天才だけのものではなく、
程度の差こそあれ、ごくふつうの人びとにも可能であることを考えてみたい、
というのがこの本の意図するところである。』