◎裸の大将流・スコア勉強法(1)下準備編◎
ここでは、裸の大将が現在行っているスコア勉強法を紹介する。
『(1)下準備編』は「スコアをいかに見やすく、わかりやすくするか」といった程度の
内容だが、これから理論を学ぶ初心者の方には、『楽典』を学習する上でのヒントに
なるよう書いたつもりである。
この練習法が、自分のための勉強法を考える一つのヒントとしてお役に立てば望外の
喜びである。
[用意するもの]
1.シャープペン(鉛筆)・消しゴム
初歩のスコア勉強は、「書いては消し、書いては消し」で良い思う。
0.9ミリのシャープペン(300~500円くらい)と2Bの芯を使っているが、書き消しがしやすく
重宝する。(仕事でも必需品となっている。)
私は主に通勤電車の中でスコアを見るが、ポケットにはいつもこの2つが入っている。
(忘れさえしなければ・・・(^_^;)
2.定規
スコアに「区切り線」を書きこむために必要。
3.楽典・音楽用語辞典・英和辞典(その他必要に応じて)
スコアに書いてある言葉は、全部調べるものだと思っておいて良い。
4.メトロノーム
メトロノーム記号通りのテンポで演奏することは少ないが、あいまいな毎回変わるような
テンポで練習するのは弊害が少なくない。
「今の段階ではこのくらいのテンポで、最終的にはこのくらいのテンポで」という風に、
常に計画性のあるテンポ設定と確認をマメに行っておくことを奨める。
5.スコア
もちろんコピー譜。個人持ちの楽譜なら横着してそのまま原本に書き込むこともあるが、
決して人には奨めない。(笑)
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※『スコア』のコピー製本について
まず、スコアを見開きA3大にコピーする。拡大・縮小を駆使して、うまくサイズを
合わせる。これを印刷面を内側にして丁寧に2つ折りし、裏面どうしをスティックのり
で貼り合わせる。
なお、コピー譜の取り扱いは著作権法に抵触しないよう気をつけること。
自分の勉強に使うだけなら問題無いが、他の楽団の所有楽譜をコピーして、自分の
楽団のコンサートに使うことは法律上許されていない。
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[大切なこと]
○指揮をしながらとっさに見てもわかるよう、分かりやすく書きこむこと。
ゆっくりと勉強できる時間をとって、きれいに丁寧に書くこと。短い時間にあわてて
書き込みをすると、書き込む字も汚くなって後から読むのがイヤになる。合奏練習中
などに走り書きした時は、後で家に帰ってきれいに書き直しておくと、整然とした
合奏を積み重ねていく助けになると思う。
○全体→部分、最初はある意味アバウトに。
スコア勉強法に決まった一つの方法は無いが、一番大きな関連から順に細かく分けて
いくことは、一種の鉄則であると思う。
○スコアの『指揮者への注意・助言(Note to Conductor)』があれば必ず読むこと。
曲の構成を読み解く上でも助けとなる。英語なら訳そう。
私は最近これをパソコンに丸ごと打ち込んで、翻訳ソフトを活用してみた。
専門用語は訳せないし訳は直訳だが、使いこなし次第では便利なものだと思う。
[スコアを読みやすくするための下準備]
1.スコアの最初に書いてあることを調べる
●曲名…意味・文化・時代背景など
●副題…曲名を補う意味・委嘱(献呈)者・委嘱(献呈)意図など
●作曲者名…時代・文化・生涯・作風など
(編曲作品の場合は、編曲者についても調べる)
※調査資料が不足しているときは、CDのライナー・ノートが手っ取り早い。
(いつも正確で十分な内容であるとは限らないが。)
2.小節番号を記入する
「何小節目か?」がすぐに数えられるよう、各ページの最初と最後の小節に小節番号を
ふっていく。私はこの方法が一番数えやすい。全体の構成を数値的に分類・分析する
ためにも有用である。
3.指示記号の意味を全て調べて記入する
音楽用語辞典が必要。用語辞典に載っていない英語の指示は英和辞典で調べる。
3.スコアの始めのほうに明示しておくこと
●全小節数
曲の全体と各部分を把握するための大切な手がかりとなる。なお、曲頭が不完全小節
(音符と休符をたしても規定の拍数より少ない小節)である場合は、次の小節(最初の完全
小節)から数え始める。(最終小節は不完全小節であっても小節数に入れる。)
●主調
殆どの場合、曲の初めの『調号』から判断する。『長調(dur)』か『短調(moll)』かわからない
時は、ピアノなどで音を出してみる。曲中で『転調』する場合は、『近親調』に転調する
ことが多いので、簡単な表を書いておくとわかりやすい。
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※近親調
ここでは複雑になりすぎないよう、主要な4つの近親調にとどめます。
・・・ここに書いてある楽語を理解できるように勉強していきましょう。
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●拍子
これは大きく書いておく。
同じ拍子でも、テンポ等によって「いくつで振るか」が問題になってくるので、カッコ書きで
(~つ振り)と書いておいても良い。
4.フレーズの区切り線を入れる
ここで少し『形式』について触れておく必要がある。
私はまだ学習者のうちなので、ここでシェーンベルク先生のお話を聞こう。
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◎『作曲の基礎技法(アルノルト・シェーンベルク著・音楽之友社)』
第2部「小形式」より(P.130)
”多くの音楽形式は、構造上三つの部分からできている。第3部は、第1部のそのままの
反復(再現部)であることもあるが、いくらか変更して反復されることが多い。第2部は、
(第1部と)対照するように組み立てられる。
この形式は、おそらく折り返しのたびごとに、その間に間奏はいる初期の(フランスの)
「ロンドー」から出たものと思われる。反復は、はじめ耳に楽しかったものを、もう一度
聞きたいという望みをかなえさせ、同時に(その楽曲を)わかりやすくするのに役立つ。
しかし一方では、対照は、単調になるのを避けるために役立つのである。
さまざまな型と段階の対照をつくり出す楽節は、多くの形式のなかに見ることができる。
それらの形式は、たとえば、小三部形式、メヌエットやスケルツォのような大三部形式、
ソナタや交響曲などである。
対照は、一貫性をもとにしている。一貫性のない対照は、「描写」音楽ではがまんできても、
しっかりと体系付けられた形式ではたえがたい。したがって、対照楽節をつくるためには、
動機型がいっそう単純な表現形式のなかで結合される場合と同じ方法を、活用しなければ
ならない。”
吹奏楽の”序曲”はだいたい『小三部形式』でできており、学習しやすい形式でもある。
多くの場合『序奏部-第1部(A)-第2部(B)-第3部(A')-終結部』のように部分分け
することができる。(第3部で全く第1部と同じ形で反復する部分には、『D.S.(ダル・
セーニョ)』が用いられる。)
このくらいの知識があれば、吹奏楽の小規模な曲ならば、たいてい構造分析できると思う。
(その他の形式ついては専門書をお読み下さい。個人的にはシェーンベルクの書がお奨め。)
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スコアを読んだり暗譜したりする時には、この『反復』を整理すること、『対照』となる
部分との区別をつけることで、スコアが随分と身近になる。ということで、反復される比較的
大きな単位を見つけ、スコアにガシガシと区切り線を入れていく。ただし後で消せるように。
さてこの『第1部(A)』の中には、「テーマ(主題)」らしき単位が1つか2つ見つかると思う。
(見つからない人はメールください。)テーマはたいてい2回繰り返して演奏され、対照となる
部分の後に再現される。
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もうすでに楽曲分析(アナリーゼ)に半分足を突っ込んでしまったのだが、これ以上文章に
するには私の知識がいささかあやふやになってきたので、ひとまず終わることにする。(笑)
理想をいえばきりが無いが、アマチュア指揮者なら初めての合奏までに、このくらいまで
やっておけば上出来ではないかと思うが、どうだろうか?。
[00/07/02版]