◎ 指揮者の「予感」について思うこと ◎
 

合奏練習や本番指揮をしている時に、ふと湧き起こる「いやな予感」に

助けられたと思うことが時々ある。おそらくこの「いやな予感」というのは、

自分が失敗した時の苦い経験が作ってくれるものであって、指揮・指導

をしている時の「いやな予感」は、ただいまの自分の方針に必要な修正

を示唆してくれる有り難いものではないかと思う。
 

たとえば合奏練習をしていても、なかなか思うようにいかない時。奏者に

要求している事がうまく伝わらず、場の雰囲気も心なしか重く感じる。

こんな時はどこか自分の要求内容や要求方法、スコアの読みの偏り、

指示の不徹底や連絡の悪さ、奏者との顕著な見解の相違、練習の

雰囲気の作り損ない、キーとなる奏者の欠席や不調、その他自分が

気付いていない奏者の意欲を減退させている原因等、速やかに判断して

結論を出していかなければならない。たとえばその場は、気付いた時点

から軽めに流すような方法に切り替え、後日に備えてゆっくりとスコアを

復習したり、自らの人々の前に立つ代表者として態度や言動を問い直し

てみることなど、日常当たり前になりつつある出来事を見直し、妥当性

を持った何かしらの軌道修正を考えるためのチャンスに変えて行くことが

できるはずである。
 

また音楽というのは言葉を使い過ぎると、どんどん悪くなって行くこと

があるというは、ベテランの指揮者でもしばしば経験することだと聞く。

そんな時は練習時間がまだ残っていても、良い状態で早めに切り上げた

方が良いかもしれない。いわゆる「深追い」の状態というものは、練習の

プランニング上、どこかに欠陥が生じている可能性が高いからである。
 

失敗体験に基づく「いやな予感」ばかりを先に取り上げてしまったが、

そんなことばかりが気になっていると気が滅入ってしまい、ひどい場合

には、指揮台に立つことさえ辛くなってしまう。

成功体験に基づくいわば「いい予感」といったものが、基本的な方針を

自信ある確固としたものとし、演奏を成功に導く貴重な里程標となって

「いやな予感」と表裏をなしている、と考えるのが健全であろう。
 

いずれにしても指揮者とは、「瞬時に先を正確に読み、妥当性のある

判断を下す」ということに関して長けていた方が良いに決まっている。

失敗にしろ成功にしろ、自己の体験を大事にしてよく気持ちを整理し、

他の先輩指揮者の経験談なども積極的に調べ、練習の現場で必要

かつ十分に役に立つような実際的なスコアの調べ方を常に研究・更新し、

代表者として人前に立つ上での態度・言動をよく研究して常に気を配る

ことなど、強い意欲を持って取り組くんでいく姿勢が望まれる。
 

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指揮者になる人って色々だから、こんな話人によったら全然関係無いの

かもしれません。ただ、こういう話を読んで記憶の脳裏にとどめておいて

もらうと、難しい事態に直面した時に悩み過ぎてしまうことを避け、より

すばやく判断して対処していけるのではないか?・・・という望みを持って

書き下ろしている次第です。
 
 

[02/10/01]