◎「トー  トー  トー」◎
 

私はもうかれこれ9年間、トロンボーンの奏法をある先生に見ていただいている。

ここ4年程は、発表会の前に2回くらい見て頂いているだけだから、習っていますなんて

とても言えない。今から思えば、高校の時から我流でやってきた部分を、随分と根気強く、

矯正していただいたものである。
 

一応、初心者ではないということで、レッスンは『Langey』というメソードの中の、わずか

数小節の<Short Exercise>の課題を"使って"始まった。今は昔のことだから、その時の

事を正確に覚えているとは言い難いが、とりあえず最初は速度・アーティキュレーション等

の記号は全て無視して、

   ○全ての音を同じ形・同じ音色で!

   ○アンブシュア(口の周辺の形)を変えないで!

   ○フレーズの途中では、息自体は止めてしまわないで!

などなど、表現以前のベーシックな部分を叩き込んで頂いた。

(注.それぞれに意図があり、条件があっての"言葉"なので、学習者は絶対に言葉面を

鵜呑みにしないように。厳密に観察すれば、音域その他の条件によって、音色もアンブ

シュアも、微妙に変わります。これは"あくまで"基礎。)
 

だが、これらの練習が、いかに貴重なものだったかがわかってきたのは、ごく最近のことで、

もともと地道なことが苦手だった私は、楽しさよりも"しんどさ"の方が上回っていたように

思う。カッコよく吹こうとする私に先生は、「もっとシンプルに、"トー トー トー"っていう感じで

吹けませんか。」とよく、おっしゃられた。
 

今年になって私は、約5年間続けてきた指揮者という役を降りた。指揮の勉強を、

できるだけやり直したかったからである。

理論を読み直すと共に、棒振りの練習を始めた経過を書いたのが、"私の自習室"という

コンテンツであるが、自分が昔習った「トー  トー  トー」と同じ事なのかもしれないなぁと、

最近になって思っている。全ての人に勧められるとは思わないが、自分の振り方に疑問を

持っている人や悩んでいる人には、是非試して欲しいと思う。一番高いのは"鏡"かな。(^_^;
 

ただし、曲を指揮しているときには、棒の振り方の"基礎"を意識してはならない。

棒の練習は、毎日毎日ちょっとずつちょっとずつやって、"クセ"になるまで何ヶ月もやるのが

"裸の大将流"の秘伝でござる。
 

[99/09/06]