◎ リーダーシップと人間関係の話(その1) ◎・・・誰にも相談できない人のために
 

いろいろ思うことがあって、リーダーシップと人間関係について、今の私の

考え方をまとめてみることにした。今まで多くの方から受けたの相談とか、

ネット上の書き込み等を見ていても、指揮者・指導者、団長・部長、パート

リーダー、先輩・後輩等々「リーダーシップ」と「人間関係」に悩む人は多い

と思ったからである。ただし、これらの考え方や行い方は人によって、また

時によって異なるため、一概に論じることには無理があるとも思うのだが、

誰にも相談できずに悩んでいる人達のために、何か問題を解決するための

糸口や、発想を転換するためのきっかけにならないかな、と思いつつ・・・。
 

私は指揮・指導等の現場で、『人が本当に動く(変わる)のは本人が自分で

そう気付いた時から、』という考え方を大切にしている。多くの人が一つに

まとまって音楽を作っていく上では、様々なルールを守らせていかなければ

ならないが、人を「しなければならない(義務・当然)」という社会的な役割や

責任の要求ばかりで動かそうとしても、なかなか動くものではない。
 

セールスの鉄則に、『商品を売る前に、自分を売れ』ということばがある。

どんなに商品が優れていてそれを事こまかに説明できたとしても、相手が

売り手に抵抗を感じたり信用しなければ決して買うことは無いという意味で

ある。これと同じように、リーダーがグループのメンバーをまとめていくため

には、メンバーからリーダーとして認められ受け容れられ一目(いちもく)

置かれることが必要となる。そのためには、まずはリーダーが率先して、

一人一人を認め、受け容れ、注目していく度量が要求されるのである。

以下、私が指揮・指導等の現場で気をつけていることをまとめてみた。
 

(1)初めて指導に行く学校では、私は「トレーナーの先生(!)」として

紹介されているから、生徒は「怖いかな?」「何をさせられるのかな?」

と緊張している場合が多い。私に教えたいことがたくさんあったとしても、

「今日偉い人がクラブに来てな、たくさんしゃべって帰らはったわ・・・」

で終わってしまっては意味が無い。(そんなトレーナー多くないですか?)
 

普段の練習ではどんなことをしているか、クラブ全体ではどんなことを

目標にしているか、常任の顧問・指揮者の方は自分のバンドのことを

どのように考えているか、部員の多くはどんなことを考えてクラブに来て

いるか、練習を見学したり話をしたりする中で、生徒の反応を注意深く

観察して、何を話すべきなのかを選択していかなければならない。

要は「この人は味方だ」ということがわかってもらえば、あとは何を

しゃべってもちゃんと聞いてくれると思うのである。(笑)
 

注.簡単に書いたが、「味方」だと思ってもらうのは決して簡単ではない。

子供は鋭く指導者の資質を見抜いてしまうからである。
 

(2)強制はしない。自分達で目標を立てて、その目標に近づいていく

手助けをするだけである。「こうして欲しい」「こうすればうまくなれるよ」

と期待する方向は示すが、あくまでも本人が目標感を持って自主的に

歩んで行くように補助するだけである。
 

(3)一人一人の技術力や理解力の差を認め、一人一人が着実に成長して

いく力がついていけば良しとする。自分の成長に確信が持てれば、後は

少しヒントを与えるだけで、他のメンバーやのことや全体のまとまりにまで、

気を配っていく余裕が生まれると思う。
 

(4)『自分がやろうとしている事』に自信を持たせること。

自信の無い子は、はたから見ると少しやればできそうなことにさえ、

躊躇してしまっている場合が多い。見通しが持てず不安が先行している

ならば、不安要素を的確に見抜いて取り除いてやり、一歩でも前進すれば

必ずほめる。

「安心」が得られれば、次第に自分から進んでチャレンジするようになる。
 

人は自分の気持ちを受け容れてくれそうにないと思った相手には、

心を閉ざしてしまう。そのことが理解できない人は、いつまでたっても

真の意味で、人の上に立つことができないと思う。 
 

[02/03/02]