◎指揮・指導のコツ~私の経験から~◎
 

最近いくつかの学校のクリニックに同行し、パートの指導をさせていただいたり、

指導を見学させていただいたりする機会を得た。初対面の生徒達に限られた

時間の中で、ウォーミングアップから基礎・楽曲練習までたった1日でどこまで

伝えられるか、これは指導する方にとってもちょっとした試練である。

ずっと長い間習慣づいて行ってきたことが1日でガラリと変わるとは思わないが、

さりとて「何も変わりませんでした」では困る。
 

こういった場合、指導の仕方にはいくつかの手法が考えられるが、ここでは

次の2つに分けて考えてみたい。
 

1つは、『自分が知っている知識・練習法そのまま教示する』方法、

もう1つは、『問題点を抽出・認知して、その解決策を探る』方法である。
 

自動車教習所に行くと、『認知→判断→操作』ということを教わるが、以前にも

述べたように、音楽を演奏をする上でもこの概念は有効であろうと思っている。
 

生徒に問題をより具体的に意識させ”認知”させるため、まず指導者は問題を

抽出していく。
 

『認知』

1.生徒に質問して顕在的な問題点(具体的な疑問や悩み)を、抽出する。

2.生徒に演奏してもらって潜在的な問題点(見過ごされている問題)を、

    抽出する。

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最近私が好んで用いているパート指導法。
 

練習の前半は、いつもやっているウォーミングアップ、ロングトーン、スケール

練習等やって見せてもらう。「ここまで」と決めたらそれまでは一切口出しをせず、

じっと観察する。
 

生徒の方は、いつもならなんとなく流しているようなことが妙に気になり、自分の中に

何らか問題を見つけようとする。結局、他人がぺらぺらしゃべったところで、自分に

直したいという意識が無ければ無意味なのである。
 

その間にこちらは、どう注意すればより効果的なアドバイスができるか、あせらず

落ち着いてゆっくりと考える。誰でもゆっくり考えられれば良いアイディアも浮かんで

来ようというものである。

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『判断』

・最も重要な問題点は何かを判断する。
 

『操作』

・問題解決の方法をしめす。
 

指導者は自分の知識や経験を一方的に与えようとするのではなく、生徒と共に学び、

共に考える姿勢が大切だろうと思う。やがてその生徒が先輩となり、指導者となった

時に、その姿勢を受け継いでいってもらうことが何よりも大切で、効果的なのではない

だろうか。
 
 

[01/03/09]