◎いつかあんな風に・・・◎
この間、私がトロンボーンで出た吹奏楽のコンサートに高校の現役の後輩が
見に来てくれた後、こんなメッセージを携帯からメールで届けてくれた。
『いつか俺もあんな風に演奏したいです!』
・・・自分が高校生の時に味わった気分を、ふと思い出した。
私は高校2年生の時、吹奏楽部の学生指揮者になった。本番は振れなかった
けれど、大阪の大きなレコード店に通ってはなけなしのバイト代でLPレコードを
少しずつ買い足し、大きな楽器店に行けば吹奏楽譜のコーナーで目を輝かせて
いた。当時のクラブはコンクールに出ていなかった(出るという発想も無かった)
が、先輩方の代から自治的でしっかりとした活動を受け継いでいたと思う。
ただ、代々部員数が少なかった。
トロンボーンを吹けば「3パートのハーモニーなるものを味わってみたいなぁ」と
思い、指揮を振れば「あぁ、レコードみたいに人数の揃ったバンドを振ってみた
いなぁ」と心の底から思った。一人で見知らぬ街へ演奏会によく出掛けたが、
人数が沢山いて自分の学校よりうまい学校の演奏を聴くと、ただただうらやま
しくてしょうがなかった。
確か神戸大学吹奏楽部のコンサートだったと思うが、整ったサウンドにすっかり
感激してしまい、暗い客席で思わず涙があふれてしまったことをよく覚えている。
その後も悲しくて涙が出ることなんて無かったのに、コンサートに出かけると、
とたんに涙腺が緩んでしまうようになってしまった。
今の私の音楽好きは、この時のうらやましさの延長のようなものだと思う。大学
ではつまらない理由で吹奏楽部に入らなかったが、社会人になって待望の人数
の揃った一般バンドに入り、自分で働いたお金で音楽教室に通ってトロンボーン
を習いだした。指揮も沢山経験させてもらった。
高校から吹奏楽を始めて15年余りが過ぎ、最近は自分がなぜ吹奏楽をやって
いるのかわからなくなってきたような気がしていた。後輩から「いつか俺もあんな
風に演奏したいです」と言ってもらって、「昔は俺もずっとそんな風に思ってたっけ
なぁ」と甘酸っぱく懐かしい気持ちを思い出した。彼もこれから頑張って演奏活動
を続けていけば、またいつか彼の後輩にそう言ってもらえる日が来るに違いない。
そんな大きな「歴史」の中に自分の位置を見出すことが出来たのは、大変幸せな
ことだと思う。私はまだまだ学習者の部類だけれど、もっともっと勉強してちゃんと
したものを身に付け、若くて勉強の機会に恵まれない連中に、色々と教えてあげ
られるようになりたいと思っている。
だがもしかすると、私が一番教えてあげたかったのは、あの頃の自分なのかも
しれない。そう思ったら、何だか少し”めまい”がした・・・
[00/12/24]