◎99年12月JBAゼミナール受講記(合奏法の巻)◎
 

「指揮法の巻」と同じく、前半にはノートした内容のまとめを、後半には私が受講して

考えた事を書くことにした。やはりノートは演奏しながら書いた走り書きなので、まとめるに

あたっては私の主観が随分混ざっている事を予めお断りしておく。

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[受講ノート・五十嵐清先生による合奏法]

※受講者は50~60名程。90分×2コマの間に、オリバドーティの「バラの謝肉祭」を

 受講生によるバンドを相手に数名が指揮、指導を受ける。

 五十嵐先生は現在、都立杉並高等学校吹奏楽部・麹町学園女子中学高等学校

 吹奏楽部・金沢学院大学吹奏楽部などでご活躍中。
 

○合奏指導(とにかくボキャブラリーが豊富!)

・息のスピード

 各メンバーに「同じスピード感覚と同じ息の量」を意識させる

 手のひらを広げて「私の手に息を吹き込むくらいのスピードと距離感で。」

 「長くて細い糸が遠くまで伸びていくようなイメージで。」
 

※合わない時

 「お腹でしっかり息を支えること」

 「かじかんだ手を温めるような息で」

 「頭の奥に響かせるように、たっぷりと。」etc.etc...
 

・「欲しい音は何か」を自分が知っていること。

 望んだ音が出てこない時…より具体的な要求を。

 「抽象的なイメージ」「具体的な奏法」「歌ってみせること」を使い分ける。
 

○アンブッシャーの指導(自分が吹いたことの無い楽器)

 名プレーヤーの演奏している写真を拡大して生徒に見せる。

 N響等のオーケストラのプレーヤーの映像を録画して、生徒に見せる。
 

○管楽器の音作り

・音の中の「部分」→アタック(発声)・コア(芯)・リリース("n"を付ける)

※ジャズ・ポップスは、"n"を付けない。

(注:この辺は単純な記述で表すのが難しい。図解を入れたいところだが…(^_^; )
 

○チューニング

 指導者が一人ずつ確認する場合は、「ポン」と聴いて次々にすすめていく。

 時間を効率的に使うためと、同じ音をずっと聴き続けるとだんだんわからなくなって

 くるからである。
 

※合わない時

・みんなで歌ってみる。

自分のやりたいことを楽器に命令する意識を持たせてみる。

 (楽器に頼り過ぎない。自分がやってるんだという意識をはっきり持つ。)

・ハーモニーディレクター(チューニングオルガン)で音を与えてみる。etc...
 

○指揮法

・左手

 基本的には右手と同じ事ばかりしない。

 左右同じように振っているつもりでも打点が2つに見える人がよくいる。

 どうしても両手で振りたい時はなるべくダウン(1拍目)を振らずに、

 横の動きを中心とする。
 

・Allegro「快活な」・・・胸を張って、少し高めのエリアで指揮する。
 

・打点が深すぎると、吹く方は辛くなる。
 

・中低音がメロディラインを吹いている場合は、胸から下で振る。
 

・(メロディラインのパートが移行する部分など)

 次に欲しいパートの人の顔を見て、「次だ」という意識を持たせて"サッ"と無視する。

 これで十分。指揮者は一人しかいないのだから、音楽を作るためには、部分・部分で

 奏者に任せることも必要。
 

※試みとして「テンポを感じたら目をつむって演奏を続けて」みる。

 テンポ感さえつかめば、あとは聴き合わせでアンサンブルをすることが出来る。

 奏者にどんなテンポで演奏して欲しいかをしっかり棒で伝えることが指揮者の使命。
 

・スコアを追うことに夢中にならない。目まで合わせなくとも、指揮者はせめて

 顔は上げていること。
 

・"ピアノ"、"フォルテ"は感情の目安。

 どのような音楽にしたいのかにより、響きは変わってくる。
 

・指揮者が10人いれば、10通りのやり方があって良い。

 『考え』を持って指揮台に立ちさえすれば!

 何かをやりたいのならば、考えを作ってこなければならない。

 指揮台に立つまでに完璧にスコアを読んでくること。

 指揮者の仕事は、指揮台に立つ前に殆ど終わっている(※1)。
 
 

・初見(一番最初の)合奏を有意義に、有効に活用する。

 譜面をそのまま一度に読まそうとしない方がよい。人間は一度に沢山のことはできない。

 …例えば「"音程"は無視して良いから、"リズム""テンポ感""拍子感"をしっかり

  読み取りましょう」とか、あるいは木管などは"指を動かすこと"に専念させるなど。 
 

○ 演奏にあたって
 

・管楽器は息が命。大切なことをもっと、しっかりと。

 息が入っていなかったり、息を適当に入れているのを見つけたら、何らかのコメントを

 出すべきである。
 

・個人に任せてみる。期限を持たせてみる。
 

・グループ練習…リズム・メロディ・ハーモニーなど、違うパートで同じ動きをしている

 グループを集めて練習する。前日から予定を貼り出しておくなどすると効率が良くなる。
 

・君には無理だよ→君にも出来るよ

 この音のピッチが悪いよ→もうちょっとこうすれば、もうちょっと良くなるよ。
 

・音楽にはウェイトがある。
 

・フレーズは上へ上へと「重ねていく」ように。
 

・タンギングはロングトーンを切っているだけ。水車の"水とハネ"のような関係。
 

・伴奏にはフレーズを歌う意識を。メロディには、伴奏の上に乗る意識を。

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他の講座でも感じたことだが、(私も含めて)初歩の指揮者はボキャブラリー

圧倒的に少ない。言葉にしろ指揮(手ぶり)にしろ『ボキャブラリー』をどう増やして

いくのか、どう整理して使いこなしていくのかが、練習を効率化し、奏者を引き付け、

表情豊かな音楽を展開していくための重要なファクターになると感じた。

だからこそこの受講記は、一刻も早くみなさんに御紹介したかったのである。
 

最後に『スコアリーディング』。

みなさんご存知の通り、今まで私が「よう書かんかった」こと。

最終日にお忙しい五十嵐先生をつかまえて質問してみた。私が受講したコースとは

違うコースの講義で触れられていたそうだ。だいたい以下のような内容だった。
 

・スコアは縦に見ない・横に見ていく(※2)。

・蛍光ペン等できれいに塗り分けているだけで終わってはダメ。

※以下のようにスコアを追っていく。

1.曲名…意味・文化・時代背景など

2.副題…曲名を補う意味・委嘱(献呈)者・委嘱(献呈)意図など

3.作曲者名…時代・文化・生涯・作風など

4.調性…部分及び全体の流れ

5.拍子…リズム・雰囲気・様式など

6.リズム・バス・伴奏から横に見ていく。

 フレーズを区切り、全体の骨格を読み取っていく。

7.和声(ハーモニー)

8.メロディ

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「指揮法の巻」「合奏法の巻」いかがでしたか・・・?
 

忙しい時期だけに今一つまとめきれないまま、リリースしちゃったんですけど。

私ももう少し練り上げて改稿していきたいなと思っていますが、みなさんもこれを

足掛かりとして色々と研究したり、試したり、考えてみたりしてみてはいかが?

自分の考えをある程度持った上で先生方の意見を聞くようにすると、

身に付く度合いが全然違いますよ。(あ!スコアリーディングと同じ事か…。)
 

[99/12/31]


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・・・後日五十嵐先生より、以下のような追加・訂正コメントをいただきました・・・
 

※1)「指揮台に立つまでで、ほぼ指揮者の仕事は完了」ということについて

 (以下ゼミナールテキストより抜粋)
 

★合奏トレーニングと合奏指揮の違い★

 合奏指導をしているときに、"合奏のトレーニング"をしているのか、

  "指揮をして音楽を表現しているのか"を、はっきり区別することが大切です。

 バンドのレベルやそのときの目的をしっかり見極め、そのウエイトを考えること

 が大切です。
 

★アマチュアの楽団では、トレーナー性が最も重要★

1)奏者から出てきた音から、いろいろな問題点をすばやく抽出し、

   的確に迅速に指示をする。(このためには多くの経験が必要)

2)テンポ、アインザッツ、音程、リズム、バランス、音色、等に

   変化と統一を与える。

3)音楽性(生命とエネルギー)を与える。

  曲はただ通し流すだけでなく、技術的に正確に、そして統一できるように

  部分的にも繰り返し練習することです。しかし、常に曲の全体の流れを

  感じていて下さい。
 

以上を認識した上で「指揮台に立つまでで、ほぼ指揮者の仕事は完了」が生きて来ます。

ここから時により「トレーナー性重視」か「音楽に命、エネルギーを与える指揮者性重視」か

を自身で選択しながら、楽団をリードして音楽を完成していかなければなりません。
 

※2)「スコアーリーディング」について

★「スコアを縦に読まず、横に読む」「スコアを先ず横に読み、その後縦に読む」

私は先ずテンポやリズムやフレーズから読みます。しかし、楽器の使い方や和音

(ハーモニー)など、吹奏楽の命の「響き」の要素の縦も、とても重要と考えます。

音と音が時間とともに、どのように推移していくか?

線でつながる(横)か、面でつながる(縦)かが私の楽しみです。

ですから横も縦も重要です。 
 

・・・先生、どうもありがとうございました。最後にテキストの結びの言葉を・・・
 

 「最後に、上手なバトン技術=良い指揮者ではなく、心を語る音楽性を重視した

 指揮を目指してもらいたい。」
 
 

[00/01/09]