◎”マジメ”と音楽◎
 

日本人は真面目(マジメ)とか、本気(ホンキ)とかいう言葉が好きだ。

「緊張感」という言葉も、好んで使う。

「彼はマジメな青年です。」「あのクラブはマジメに練習しているね。」という時、

”マジメ”という言葉は、この国ではほめ言葉である。他の国では知らないけど。

「もっと緊張感を持って取り組みなさい!」「最近たるんできとるなぁ!」

マジメは美徳。緊張感を持って、本気を、やる気を出して、さあさあさあ!(^_^;;;

そしてたいていマジメにやる時には、顔の表情が真剣になる。

時には少し、怖くもなる。
 

『~練習』『演奏』『合奏』『指導』『トレーニング』など、「ふまじめ」だったり

「ふざけ」たりしていては、良い成果を得ることは期待できない。確かにそう思う。

だが一つの音楽の中には、緩急の対照的な表情が、一通りならず織り込まれている。

また、音楽は「いま、ここ」に生きるものである。過去に決められた方法に従って

演奏するばかりでなく、絶えず新しく創り出す、即興性に近い新鮮な感性を要求する。
 

”マジメ”という言葉を和英辞典で引いてみた。いくつかのニュアンスがあるようだ。

    seriously:真剣に、本気で

    soberly:まじめに、落ちついて

    gravely:重大に、まじめに、厳粛に 

    ※三省堂監修のカシオペア(Windows-CE機)付属の辞典より。本格的な辞書を引けば

  より沢山の意味が出てくるが、ここでは参考程度にとどめておきたい。
 

音楽を演奏する時に、あなたはどんな”マジメ”がふさわしいと思いますか?
 

『発表会』『定期演奏会』などの場で、私はしばしば「マジメな演奏」に憮然とする。

体じゅう緊張感にあふれた演奏者、コワイ顔。聴く方も緊張感を強いられる。

こちらの顔までコワくなりそうだ。曲想の変化に乏しい。難しい部分を、難しいと

意識している様子が、ありありとうかがえる。時に、自己満足的、自己感動的、

閉鎖的、悲壮的...。多くの場合、ずっしりと疲れる、肩がこる、息が詰まる。最後に

盛大な拍手を”要求”されることもある。多くの場合、聴衆はマジメに拍手をする。

賞賛しているのは、演奏に対してなのか、マジメさに対してなのか...(ため息...).

いつでも、どんな演奏にでも拍手をすることは、時に演奏者のためにならないことも

あるのではないだろうか。
 

我々は今、「真面目」の意味を、マジメに考え直す時が来ているのではないだろうか。

私にはそのことが、この国の音楽シーンをより面白くすることに、役立つような気が

してならないのである。少なくとも、聴く側にとっては...。
 

[99/11/02]