◎下手なバンドを上手くする方法◎ ・・・音の間違いを無くそう
私は少しぐらい下手でも、奏者の一生懸命さとか情熱とかが伝わってくる
ような演奏が好きだ。しかし「音の間違い」だけは感心しない。というより、
もったいない。せっかくきれいに響きかけているハーモニーが台無しになる、
譜面上は同じ音なのに、誰かが#や♭を落とせば音が半音でぶつかって
奇妙な響きになる。長調に響く場面で短調の響きが入り混じったり、明るい
抜けの良いメロディにくすんだ響きが入り混じったりする。
又はその逆が起きる。・・・
このような演奏を聞くたび、「この沢山の”音の間違い”や”音の間違いかけ”
さえ無くなれば、随分立派な演奏になっただろうに・・・」との思いをすることが
最近多かった。効果を狙ってわざと不協和音が書かれた楽曲や場面だという
のでなければ、演奏上の印象は確実にマイナスとなる。少し大げさに言えば、
譜読みの不正確さは「不注意なバンド・練習不足」と取られてしまうのである。
聞く人が聞けばその音の間違いが、緊張のあまりたまたま音が外れてしまった
のか、普段から音を間違え続けていたのかは、音の外れ方のニュアンスで、
すぐにバレてしまうものと思ってよい。
『チューニング』を始めとして、細かいピッチのズレに気を遣わないバンドは
いまどき少ないだろう。
「チューニング・メーターを使って基準ピッチとの数セントの違いの修正に
腐心している裏で、半音の音の間違いが気付かれず放置されている」
・・・なんて事はざらに起こっている?かもしれない。
そこでこの際、「音の間違い」の原因と対策について私なりに考えてみたい
と思う。
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【音の間違いの種類】
1.技術的に音が高過ぎて(低過ぎて)外れてしまう。
2.緊張のあまり、偶発的に音が外れてしまう。
3.譜面に書かれている音が、正確に読めていない。
4.(同じ指使いで幾つかの異なる音が出せる楽器の場合)
指使いやポジションは合っていても、違う音が出ている事を
感得できていない。
5.その他・・・(^_^;;;
ここで言う音の間違いとは、主に3のことを述べている。
(4も極端な場合になると深刻だが・・・)
3の原因の殆どは調号の見落としによる。また、臨時記号はその小節内
において有効であるという原則を知らない場合が意外と多い。調号・臨時
記号を見落とすと、正しい音を演奏している人と誤った音を演奏している
人の間で、多くの場合「半音」の音の違い(短2度or増1度)が生じる。
試しにピアノやキーボードで半音違いの2つの音を弾いてみれば、殆どの
人が、その響きを「協和しない、不快な響き」と感じるだろう。
(そのような効果を狙った楽曲やハーモニーであるならばともかくとして)
指導者は基本的に、そのような音の間違いは耳で聞いて気付かなければ
ならないだろう。しかしこれは、合奏指導というよりは間違い探しに近いと、
私は思う。「合奏メンバーの数が多い」「合奏にかける時間的なゆとりが
少ない」「間違った音を非常に小さい音で演奏している」などの条件が原因
となって、音の間違いが短時間の間に見付けられらない場合が少なくない。
いまどき学校・職場・一般など殆どのバンドは、合奏練習に割ける時間的な
余裕があまり多くない。少ない合奏練習時間内に指揮者が指摘しなければ
ならない事柄は多くあるから、音の間違いを見つけて指摘することに多大な
時間を割くというのは、少々もったいない気はしまいか?。遠くからお金を
出して呼んできた講師を使うならば尚更である。(伝授して欲しい演奏とアン
サンブルの知識や経験上のノウハウは、他にたくさんあるはずなのだから。)
指揮者が演奏を録音して、一人部屋でじっくりとプレイバックを聞くというのは、
合奏中に見つけられなかった音の間違いを見付けるのに有効な手段ではある。
これも必要に応じてやっていくと良いと思うが、奏者の側に、正確な譜読みの
技術と意識が備わっていかなければ、いくら音の間違いを指摘し始めても
きりがない。
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『下手なバンドを上手くする方法』というのは少し大げさかもしれない。
もう少し控えめに書けばこういうことだ。
『下手なバンドの演奏をそれほど下手じゃなく聞かせる方法』。
それは音の間違いを徹底して無くすことである。
楽譜を配った時や”初期の練習”では、まず最初の調号と曲中の調号の
変化に注意して、(後から消せる鉛筆かシャープペンで)『自分が間違えて
しまいそうな音』の上に「#」「♭」「ナチュラル」などを細かく書いておく。
(芯は書き込みやすく消しやすいBとか2Bくらいがいい)
わかりやすければ、”D♯、G♭・・・”という風に音名を書き込んでも良い。
そして練習が進む中で間違えないと自信がつけば消し込んでいく。これは
一見単純作業のようだけれど、うまく身に付けていけば、譜読み(少なくとも
調号・調性)への注意力が養えると思う。曲数をこなし、適切な基礎練習を
通じて音程感と調性感を身につけるほど、記号の書き込みは減っていく
はずである。
※ある指導者の方の言葉。
「みんな僕の言ってる事を丁寧に楽譜に書き付けていってくれるのはありがたい
んだけど、出来るようになるまで練習して、出来るようになった事は消してね!。
譜面が書き込みだらけになるよ!。」
書き込んだ”だけ”で安心してはだめ、受身な”だけ”ではだめ、という戒めである。
ただし、この方法はやはり極論であろう。
願わくば、このような単純な取り組みから発展して、
→「楽曲の調性を理解してから練習・演奏しましょうか!」
→「今取り組んでいる曲の音階・ハーモニー練習を初めにやっておきましょうか!」
→「普段から色々な調性の音階・ハーモニー練習をやっておきましょうか!」
というように、ただ「やらなイカンから基礎練やってます」というのではなく、
「正しい音程や音の間違いを感得し、修正できる音程感・調性感を養うために」
ということにつながっていくことが肝心である。
最終的には、練習の方法論や個々のバンドの事情(”お家の事情”)は
どうであれ、最終的な本番での演奏の音の間違いは極力無くすべきだ。
「音の間違いが無くなるだけで、下手なバンドの演奏がワンランク上手に
聞こえるはずだ!」と、断言してもいい。
※これは主にスクールバンドの演奏の印象について書いていますが、
大人の奏者の方にも、ちょっぴり参考になるかもしれませんね。
[02/12/02]