◎「そのまま振っても良い音はしない」◎・・・一般バンド指導法を考える
先日、ある一般バンドのコンサートに行ってきた。
ホールの少し後ろの方でしばらく聞いていたが、私が一般バンドのコンサートを
聞いていて、何かいつも漠然と感じていることがあることに気付いた。あえて
言葉にしてみれば「サウンドに透明感が無い、統一感が無い」ということである。
なぜか・・・?。
今回、今まで以上にそのことを強く感じた理由は、おそらく昨年来いくつかの
中学校バンドを数多く訪れたり指導したりしている内に、中学校のバンドの音に
随分と耳が慣れたからだと思う。(私は高校から吹奏楽を始めたし、そこもあまり
きちんとサウンドトレーニングされたクラブではなかった。)
指導顧問の先生との意見交換なども随分刺激になった。それまでの私には、
思いも寄らなかったご意見が色々聞けたからだ。
少し大雑把になるかと思うが、ここ1~2年の経験を通じて私が感じるようになった、
「中学校バンド」と「一般バンド」のサウンドの傾向の違いを書き表してみようと思う。
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1.中学校バンドは、全員がほぼ初心者=吹奏楽のスタートラインであるため、
メンバーの音楽性が似通っており、奏法も決して技術的にはうまくはないが
よく揃っている。
呼吸法・フォームについても日頃から絶えず注意を喚起されているし、技術や
体力が未熟な分全身で音を作っているため、良くも悪くも楽器がよく鳴っている。
ただし本番までの曲の仕上がりには少し時間がかかるため、楽曲表現としては
未完成なまま本番を迎えてしまうことも多い。
2.中学校バンドの指導に慣れてから一般バンドの指導をしてみて、あらためて
譜読みの早さに驚いた。非常に短時間の間に曲としてよくまとまっていくように
聞こえるのだが、演奏経験とスキルの差、音楽性や演奏に対する姿勢などが
まちまちであるため、よく鳴っている人とあまり鳴っていない人の差が大きい。
無意識の内に口先だけで吹いてしまっている奏者が意外に多いのが気になる。
練習日数や時間が学校のバンドに比べてかなり少ない事や、大人のメンバー
中心だから・・・ということで、一般に呼吸法・フォーム・サウンドトレーニング等の
ファーストステップよりも、楽曲表現等のセカンドステップにかける比重の方が
概して大きい。
※これらの傾向の違いにより、指揮者・指導者の傾向も自ずと変ってくる。
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合奏音楽のごく基本的な要件として、
「よくブレンドされた独特の美しさと力強さ、サウンドの多彩さ」
ということが挙げられると思う。
単純に考えてみても、多くの奏者がピッチや奏法を統一して演奏すれば、どの
楽器の音でもない、二次的にブレンドされたサウンドが響くはずなのである。
多くのメンバーの集まりであるバンドの音が一つのまとまった響きとして聞こえて
くるからこそ、人はそれを美しいと感じるのではないだろうか。
個々の奏者の技術は高くとも、演奏法(たとえば音量と息のスピード、アタックと
リリースの音の処理等々)が揃っていなければ、そうしたよくブレンドされたバンド
特有の響きといったものはなかなか出せないし、逆にまた個々の奏者の技術は
それほど高くはなくても、全員がよく統一された演奏法を目指していれば、
信じがたいほど美しいサウンドが作れるとしても決して不思議ではない。
もちろん楽曲の個性やバンドの個性を生かすために、ある部分で特定のパートや
奏者を前面に出すことで作られる美しさというのもあるはずだが、それは全員が
統一したサウンドを奏でられること(を一つの目標にすること)がベースになって
いなければ、アンバランスに陥ってしまう危険性をはらんでいるように思う。
これらのことから、一般バンドの指揮者の注意点として、
「そのまま振っても良い音はしない」ということを挙げてみたいと思う。
・・・他の一般バンド指揮者の方のご意見や経験談、方法論も伺ってみたい。
[02/02/14]
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※よく考えてみたらこれは「大学バンド」にもきっと、あてはまるところが多いでしょうね。