◎ 打点を隠しても指揮は出来る!? ◎
先日受講してきた指揮者講習会(JBA関西支部主催)で、ある実験的な
試みを体験させていただいた。以下、講師の先生のそれまでの話の流れ
のほんの一部を、私なりに理解した言葉で書いてみる。
1.(条件さえ揃えば)指揮は顔だけでも出来る。顔の表情や合図が
主体で、腕などの体の動きは顔を補助するもの、という風に発想を変えよ。
※我々は腕を大きく振ると顔が下に下がる事がよくあるが、本末転倒。
2.指揮法では”打法”とか”打点”という用語を用いるので、ついつい
「下に打つもの」というイメージに捉えがちだが、拍は出発点であり、音楽が
外に出て行く、次の拍に向かって動き出す出発点であると捉えよ。
3.下の”打点”ではなく、上の「ト」(裏拍)の点だけでも、奏者に指示を
出したり、テンポを変えたりすることが出来る。
・・・ということで、指揮台をぐっと高く上げてスコアなどで右腕の動きを殆ど
隠してしまった。この時指揮棒は持たず、腕の動きは上下の縦の動きのみ
にし、奏者からは手が上がった時に上の点だけがかろうじて見えるだけに
する。おもしろそうな予感がしたので、被験者をかって出た。ホルストの第一
組曲の第1楽章”シャコンヌ”の一部分。テンポを遅くしたり、速くしたりと
勝手に変化させてみると、なるほど打点が見えなくとも、上の点だけを見て
奏者はテンポを変えてくれる。指揮者がテンポを変え始めたタイミングから
どのくらい遅れてバンドのテンポが変わり出すか?とか、各奏者の動きや
変化がどのくらい揃うか?など、(上の点しか見えない状態にもかかわらず)
合図の出し方や指揮の振り方で随分変わるようであった。私の場合、動作が
少し速過ぎるために上の点がわかりにくいと指摘され、腕の動かし方や滞空
時間(?)を改めるような練習を指導していただいた。「前より少し、上の点が
はっきり出せるようになったかな?」と思ったら、何とバンドからの反応が、
顕著に良くなったのである!。
家に帰ってきてから「これは練習する価値がある」と思い、このような練習を
CDによる「アルメニアンダンス・パートⅠ」の演奏に合わせてやってみた。
以前に受けた別の指揮法講習会で、「2+3、3+2」という変拍子を振る時に、
棒の高さで奏者に拍をわからせる方法を教えていただいたことを思い出し、
『”2”の時は隠しておいて”3”の時に”ぬーっ”と右手が上に出てくるように
練習してみたらいいかも!』と思ったからである。実際やってみると、効果
てきめんである(ように思った)。
”ぬーっと”という表現はまぁおもしろおかしく言っているだけだが、下の方の
隠れた部分から右手が上に現れる時の、タイミング、スピード感、表情という
ものがあって、一度ではなかなかうまくいかないのである。またたとえば、
速い2拍子を振る時も、ゆったりと歌うような3拍子を振る時も、表情が激しく
入れ替わる4拍子を振る時も、フレーズの開始の合図とか、表情の表し方
とか、右手一つで出そうと思うと、結構右手の「現れ方」が気になってしょうが
ないのである。また、全部の拍が上に出てくると、結構重く感じることが多い。
どの拍を強調すると音楽的にしっくり来るのか、どの拍で合図を出せば奏者が
出やすいのか、そんなことばかり集中して考えている自分に気付く・・・。
そうして同じ曲で2度ほど目隠し付きでやってから、3回目に目隠しを取り払って、
指揮棒を持ち、普段のように振ってみる。今までと違うのは、指揮棒の高さとか
ニュアンスに非常に気を配っていること。うまくいけば・・・指揮に自然さが増し、
非常に見やすくわかりやすく、上品で優雅になる・・・かもしれませんよ!。
・・・曲は何でも良いと思います。後はあなたの工夫と発想次第!。(≧◇≦)ノ!
※紙谷一衛先生は、全国各地の指揮法講習会に呼ばれている方と思います。
ここに書いた内容は、先生のお話の中からほんの一部だけ抜き出しただけです。
少々遠方でも、是非先生の講習を受けてみることお勧めします!。
※(吾反省ス) 「カッコよく振っても、カッコよく見える指揮にはならない。」 (^_^;;;