◎音楽の学校!コバケン・チェコフィルの「我が祖国」◎
ベドルジーハ・スメタナ(1824-84):連作交響詩「わが祖国」
1.ヴィシェフラド(高い城) [15:54]
2.ヴルタヴァ(モルダウ) [11:53]
3.シャールカ [10:23]
4.ボヘミアの森と草原から [12:57]
5.ターボル [13:06]
6.ブラニーク [15:02]
1997年5月10~12日 プラハ「芸術家の家」ドヴォルザーク・ホールにて収録
小林研一郎(指揮)/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
Pony Canyon/PCCL-00409
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このCDのことは、1年前に書いた「私の好きな演奏家:コンサート編」でも
触れていたし、同じ紹介するなら色々な物をという気持ちがあって躊躇して
いたのだが、ついに書かずにはいられなくなった。
このCDを買ったのは、以前にご紹介した1997年の11月のチェコ・フィル
大阪公演の少し前だから、もう3年も前になる。昨年は、このCDと全く同じ
演奏者・曲の大阪公演にも行った。「コーリャ・愛のプラハ」という映画も見に
行って感動したし、4年前の新婚旅行はプラハとウィーンに行ったし、もう
”チェコびいき”もいいところなのである。思い入れが有り過ぎる。
しかしながら、・・・今になってこのCDは、私にとっては『音楽の学校』とも
いうべき存在だ。曲・演奏・録音、どれをとっても素晴らしい。
私の知るクラシックファン、クラシック通の人でも「わが祖国」全曲が好きだ
という人は意外に少ない。全部通して聴くと70~80分になるし、私もこの
CDを手に入れるまでは、正直言って全部聴き通したことは無かった。
ビデオでは、クーベリックの来日公演のテレビ放映を録画したものがあり、
これは本当によく見たし、本当に良かったけれども。
しかし、この曲を隅々まで聴きこんで楽しむことができるようになったのは
このCDからだ。録音の良さも随分プラスになっていて、非常に心地良い
残響感と共に、オケの音の良さ、演奏の空気感を見事に伝えている。
チェコ・フィルは、他のメジャーなオケに比べると知名度の点では少し地味
だけれども、個々の奏者の実力、アンサンブルの完成度、独特の音色など、
世界でも五指に入るオーケストラではなかろうか。どの楽器も自分の声の
ように良く歌うし、それはもう音を外すとか外さないといったレヴェルでは
ない。各パートのアンサンブル(音色と奏法の統一)は、オルガントーンと
呼ぶにふさわしい。
トランペット・クラリネット・ホルンなどが豊かに歌うところ、ヴィブラートの
かかり方には好き嫌いがあるみたい。あんまりきれいではっきりした音
だから、私は全然気にならないけど。
小林研一郎(愛称コバケン)氏については、このチェコの第2の国歌とも
言われる曲を、お膝元のチェコ・フィルと見事に協力して十分に演奏しきって
いる。指揮者の姿が出過ぎるわけでもないし、消えるわけでもない。
これは、ウィーンで活躍する小澤征爾氏に匹敵する快挙だと私は思う。
日本でも、もっともっと注目されて良いのではないだろうか。
このCDを聴き込んでくると、だんだんと作曲者が誰で、指揮者が誰で、
オケはどこどこだなんてことが気にならなくなってくる。
こんなに美しく、素朴で、根源的な音楽は、滅多と聴かれまい。
それはあたかも”生きていることの素晴らしさ”を物語ってくれているかの
ようである。
[00/09/07]