◎第六話 「何のために・・・」◎
昨年のコンクール審査員講評用紙を見せてもらった。
「音が合っていないのが残念」「音に透明感が無い」などの言葉が目につく。
"バンド・メソード"を使うといっても、特別に難しいことをさせるわけでは無い。
4/4拍子全音符のB音階。アタックのタイミングと明瞭さ、楽器がよく鳴っていること、
リリースから次の音(のアタック)への移り変わりの滑らかさ、一音ずつ同じ形でムラ
無くそろっていること・・・などなど、易しい課題だからこそ、最も厳しい要求が出せる。
「こんなあたり前のことが出来てなかったら、審査員は1小節聴いて×つけるで!。」
・・・生徒の表情が引き締まる。
今まで殆どやってこなかった、ハーモニーの練習。やってこなかった理由の一つは、
オルガンの類が無いこと。今の予算ですぐに"ハーモニー・ディレクター"を用意するのは
難しい。生徒に、家に使っていないキーボードがないかたずねてみたところ、ほこりを
かぶっているのがあると言って、3年生の子が持ってきてくれた。オルガンの音色も
選べる上、思いのほか「ピッチ可変機能」がついていたのはありがたかった。もちろん
純正調の響きまでは作れないが、これがあるのと無いのでは雲泥の差である。
早速チューニングも、この音を聴いて合わさせる。ぴったり合うことよりも、良い音を
出すこと、自分の力で基準音に「近づける」ことを重視させる。それを毎日続ければ、
個人差はあれ、必ず音を聴き合わせる力がつく。
B-durのカデンツ。1小節目の"ドミソ"から先に進めない。やはりピッチ以前に個々の音が
響いていない。息をたっぷり使って、太く力強い音で、楽器をよく鳴らして・・・などなど、
言葉を尽くして、少しでもいい音を出させる。同音楽器同志のユニゾンの音合わせ、
基準音の合わせ直し、根音・第5音・第3音の音の取り方(アドバイスのし方も難しい・・・)
など多大な時間をかけて、ようやくハーモニーらしきものが聞こえてきた。
何と言うか、急に音の通りが良くなったような、響きの重心が低くなったような気になる。
「(暑いし)しんどいけど、少しずつ合うようにしていこうや。これが合うようにならへんかっ
たら、毎年審査員に”音が濁ってる、合ってない”って書かれ続けるで!。」
・・・生徒の表情が引き締まる。
「練習の目的は、『より良い(美しい)音楽を引き出すため、作曲者によって書かれた
ものをより良く引き出すため』なのだからそう言えばいいのに、なぜ俺はいちいち、
"審査員"を引き合いに出すのだろう・・・?。」
ふと、そんなことを考えてしまった。
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私はまだ吹奏楽指導については学習者の類です。自分で言うのも何ですが、
あまり確定的・体系的な指導は今のところできていませんので、この指導法は
あくまで"参考程度"に、お考え下さいましまし。(^_^)
[00/07/22]